秋田の酒物語 三人の杜氏の言霊 - こめたび〜秋田産地直送。自然栽培米、アイガモ農法天日干し米、いぶりがっこなどを産地直送でお届けします。

第5回  いい酒っていうのは、その人にとって
浸透圧が合うんだよ

和賀天の戸さんが一番飲んで欲しい層ってあるんですか。
おいしいって言ってもらいたい人たち。

森谷飲んで「わー」とか「おお〜」とかではないんだけども、
普段こう酒を酌み交わして、話が弾んで、家にいるときはゆっくりリラックスできてっていう・・・
前に名智さん(※)とこんな話をしたことがあって
「なあ森谷。いい酒って言うのは、その人にとって浸透圧が合うんだよ」

※名智健二
写真家。
酒蔵に泊まりこんで酒造りの深部を映し出すような作品を生み出してきた。雑誌の取材で訪れたことがきっかけで天の戸との親交は長い。

カメラマン浸透圧?
和賀呑んだ酒が、喉からではなく体にゆっくりと浸みこんでいくような・・・(うっとりとする)
森谷だから、「わー」とか「おおー」ではないはず。
和賀(大きくうなずく)

森谷

森谷いつの間にか、ビンを見ると、「ああ、思いのほか飲んでるな」と。
和賀ふふふ。
森谷知らず知らずに。
だから第一印象で、「わー」とか「すごいー」とかっていうとだいたい飽きるんだすね。

和賀ええ。
森谷当たってるっすべ。「ぶわーこの酒すごいー」なんて言って一杯呑んで、「あと次は?」って行っちゃう。
全然褒めてないことだっすね。
普段からゆっくり飲んでて、いつの間にかお酒が、「ああ、昨日はちょっと思いのほか飲んだけども、ぐっすり寝れて朝気持ちいいな」と。これ、すごくいい世界だっすね。
「この前楽しかったな」「また一杯やろうな」って注ぎあって、そう言えるような酒呑みみいいっすね。

和賀ですね。
森谷あの、まさにニッポンカイ(※)がそういう飲み方ですよね。

※ニッポンカイ
冬に荒れる大海原のことではなく、秋田県横手市某所にある魚屋であり居酒屋。
一見さんはちょっと入りにくい、夜な夜な常連が集うオトナの集会所。
日本海

和賀あそこにいるとほんとに面白いのは、
みなさんがお酒を持ってくる場所じゃないですか。
勝手に自分の飲みたいお酒や肴を持ってきて、「さあみんなで呑もう」ってやる。
この前連れてったけど。(カメラマンを見て)

カメラマンこのあいだ1回行きました。
森谷飲めないけど(笑)
カメラマン飲めないけど行きました(笑)
和賀みんなさんざん手に入れた珍しいお酒もってくるんだけど、
最後に「精撰」。みんな「精撰!」って言って・・・

森谷最後は天の戸っていう話だっすか。
和賀あそこは天の戸しか置いてない訳ですよ。
精撰(※)しか置いてない。

森谷シメの精撰(笑)

※天の戸 精撰
天の戸の地元限定レーベル。
「毎日呑めるおいしい酒」としてこのエリアの人々の日々の疲れを癒やしている。
森谷

和賀ですし、ずっと飲んでられるお酒って、ご飯を食べてるときに・・・
森谷すごい!
和賀そうなんですよ。食べながらすすむお酒(笑)
結局、あそこに落ち着きます。ご飯のシメみたいに。

森谷いいっすよね。それはその通りでねすか。その通り。
一同(笑)
森谷それは話の、たとえばね、絵があって、部屋に飾っておいて、いつもなにも気に入ったではないけど、普段にあるような居心地の良さ。居心地の良さってあるっすね。
だから、酒造ってるとき、たぶん麹触ったりやってると、良く出来ると触って気持ちいんだすよ。

和賀はい。はい。
森谷そういう感覚ってあるんだすよ。
和賀はー。
森谷それからふかす前の米も、きれいに研げて、水分がちょうどいいと、触って気持ちいんだすよ。
きれいだし気持ちよさってのがあって、そういうのが最終的に飲むときの気持ちよさを演出するような。

森谷

和賀はー。
森谷気するっすよ。
和賀わかるんですね。
前、気圧によって蒸し方をちょっと変えたり、水分、絶対違うんだって、話。

森谷蔵に中にいてわかるってのはすごいっすよね。
和賀すごいですよね。
森谷気圧計はない。そういえば気圧計ない。
和賀ないんですね。
森谷ないよね。気圧計はないし、温度計も下手すれば使わねえもんね。
室(むろ)さはわんさかあるけど。室というのは固まったものに差すからその温度が見れるわけですよ。

森谷

和賀うんうん。
森谷空間でこういうふうに温度が毎日違うところで、温度計やったっても一部しかとれないわけですね。やっぱり指入れて手入れてやった方が当たるし、あれだべ、あなたがた(蔵人)は室さ入れば、今日室温何度って言えるべ。ちょっとした差で、「あ、さびーな」と思う時あるもんね。30度ぐらいだと。
和賀あ、わかるんですね。
森谷やっぱり慣れだもの。32度を定温としてやってると、ちょっと上げれば35度ってばやっぱりあっちっすね。そういうのあるよな。部屋の温度もそうなっていぐ。だんだんにそういうのに慣れてくるから。
和賀なるほど。
森谷ちょっと触ったときも、ふかしも固い柔らかいもすぐわかるよね。
だんだんわかってくるんだっすよ。そいういうの。

和賀へー。人間てすごいですね。そんな1度2度。
森谷五感。五感なんだっすよ。
しかも温度だけのセンサーでねくて、水分とかも感じるから、息吸ってるときに乾いてるとさわさわするっすね。風が。

森谷

和賀ふんふん。
森谷湿気てるときにもっとドタッと(ジメッと)するっすね。
和賀酒造りは文字通り五感を研ぎ澄ましてやることなんですね。
それにしても今日は、「お水止めてください」の話聞けてよかったなぁ!
湧き水のところ見に行きたくなっちゃった。

森谷今は無理無理。雪でいっぱいだすよ。(雪解けで)水量も不安定だし。
5月さ入ってからかな。

和賀また来ます!
本日はありがとうございました。

和賀

聞き手: 和賀 郷
カメラマン: 加藤 慎平

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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