秋田の酒物語 三人の杜氏の言霊 - こめたび〜秋田産地直送。自然栽培米、アイガモ農法天日干し米、いぶりがっこなどを産地直送でお届けします。

第1回  こだわりやうんちくは
「おいしい」の後からついてくる

森谷・和賀(ナマハゲ伝説について雑談中・・・)

森谷それで、どういうことでしたっけ?
和賀あっ。そうなんです。お時間ありがとうございます、お忙しいところ。
今日はですね・・・

森谷はい。(マイク)入ってますか?
和賀あーあー(笑)
このたびは、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2015」(※)、最高金賞受賞おめでとうございます!

※ワイングラスでおいしい日本酒アワード
ワイングラスで日本酒を飲む新しいスタイルを提案している団体が行うコンペティション。
全国の蔵元からエントリーされた至極の日本酒から、天の戸シルキーがスパークリングSAKE部門で2015年最高金賞を受賞しました。

森谷ありがとうございます。
和賀今回最高金賞に選ばれた「シルキー」は私の大好きなお酒です。
炭酸のシュワッが運んでくる酒蔵の香りと、甘すぎず、酸味のきいたさわやかな味わいが広く皆さんに喜ばれるので、天の戸さんを初めて飲むという方には、必ず紹介リストに入れさせていただいてます。

森谷それはうれしいですね。特に女性に人気があります。
蔵に来たお客さんに試飲してもらうときもワイングラスで出しています。

森谷

和賀今日お伺いしたのは、
今まで「こめたび」はお米を中心に秋田の食材を紹介してきたんですけれど、やはり秋田の食を語るときに絶対お酒は欠かせないじゃないかと、ずっとずっと思ってまして。
それで普段「ご近所づきあい」させてもらっている酒蔵さんからご紹介したいと思ってこうして伺いました。

和賀

和賀それで、今日は杜氏に
うちは米も扱っているので、ものづくりというところに視点を当ててお話をお聞きしたいなと思ってるんです。

森谷あー。
和賀天の戸さんは、蔵人さんと地元の農家さんとで蔵で仕込む酒米づくり(※)をしていて、米が育つたんぼの水と、酒を仕込む水が同じ、というところからお酒造りが始まっていますよね。

※天の戸の酒米づくり
天の戸は、お酒の原材料となる酒米を、全量、蔵から半径5km以内の田んぼで作っています。
酒米は栽培が難しく、積極的に栽培しようという生産者は少ないのが現状です。高齢化も加わり、生産者が減る一方の米づくりの世界で、地元産の酒米だけで自蔵の仕込み米を供給することは、「米どころ秋田」と言えども大変なことです。

現在、18人の農家で構成された酒米研究会には、森谷杜氏をはじめ現役の蔵人も含まれ、その生き方を名付けた「夏田冬蔵」の考え方は、蔵の哲学となっています。

1988年 地元浅舞地区で酒米研究会を発足
2011年 全量純米酒に完全移行
2012年 全国新酒鑑評会・金賞を純米酒で受賞
田んぼ
浅舞地区酒米研究会の皆さん

森谷まず、一つの考え方として
自分たちのいる場所とかね、自分たちの作ってるものとか、風景とかっていうものを、自分たちがすごいなってまず絶対最初は思わないと思うんですよ。

和賀当たり前すぎて、意識せずに毎日過ごしている・・・
森谷その評価って言うものがどこから来るかって言うと、ぶらっとここに来た人とか、それまで別のところに住んでた人が、ここの食べ物を食べたとか、そいうことで初めて、日頃他のものを食べてる、他のものを見てるって言う人がここに来て価値を見いだしてくれる。
和賀あ−、私秋田に来て、初めて食べたり、見たり、驚く場面がたくさんあります。
森谷だから自分たちが最初から「この土地がいい」とか「この水がおいしい」とかっては、あまりにも自然なために思ってなかったんですよ。
「これくらいのものはどこにでもあるだろう」って、別に水を自慢するとか空気を自慢するとか、何もない風景を自慢するとかってのはなかったと思うんですよね。

森谷

森谷それが蔵にいろんな人が来てくれるようになって、その人たちが見いだしてくれるのもののほうが多いですね。
ある意味ですごくいい意味でおだてられて、「おいしい」、「これすごい」とか、酒の造り方も昔の作業が今も残ってるような造り方なので「これは逆に残っててすごい」とか。
んだから評価はほとんど外から来てるんですね。

当然、もし自分たちが作ったお酒を、自分たちがおいしいって言うんであればなんの意味もなくて、直接造りに携わってない人たちに、フラットな感覚で「おいしい」と言ってもらわないと困るわけですよ。

森谷

森谷そして、もしね、一番いいのは、「おいしい」と言ってもらってから、実はこのお酒は地元の米だけで造ってるんです、米を育ててる水と仕込んでる水が一緒なんです、って膨らんでくる。
そういうのがすごく大切なことで。

和賀「おいしい」がまずあって、うんちくやこだわりは、後からついてくればいいということですか。
森谷最初は自分たちがそこに本当の価値を見い出してるかっていうと、そうでなくて。教えてもらったからこの辺のおばあちゃん達が作ってる漬物がすごくおいしい。
またどっか遠くに行って食べて「えっ」って思ったりするのが、ここに戻って「これが自分の舌の原点だ」みたいなことがあるっすね。
そういうことってあるすっね。
だから自分たちが最初からそいういうものを持ってたんじゃなくて、ある意味すごく現代的なことなんですよ、これは。

和賀なるほど、
たくさんの人の目に届くことで、自分の位置が分かる。

森谷そう。評価もされる。

(続く)